Time Crystals Protected by Floquet Dynamical Symmetry in Hubbard Models

D2の鎮西です。
コロナ騒動でブログが少し遅くなってしまいましたが、3月末にarXivへ投稿した論文をご紹介します。

言うまでもありませんが、物理学において対称性は非常に重要な役割を果たしています。それは非平衡系においても同様で、非平衡ダイナミクスや非平衡相転移など様々な現象が対称性に基づいて統一的に理解されてきました。しかし最近、イギリスのグループによって、通常の意味では対称性ではないが系の非平衡な振る舞いを特徴付けるunconventionalな動的対称性が提案されました[https://www.nature.com/articles/s41467-019-09757-y]。その動的対称性を持つ系は、長時間経っても熱平衡化せず、時間結晶状態が実現します。

今回の研究では、そのunconventionalな動的対称性を時間周期的に駆動された量子系(フロケ系)に拡張した「フロケ動的対称性」を提案し、その対称性によって二種類の異なる時間結晶状態が実現することを明らかにしました。特にそのうち片方は、今まで多く議論されてきた時間結晶状態とは異なり、二つの時間スケールによって特徴付けられる準周期的な時間発展を示します。またさらに、円偏光で駆動されたハバード模型が「フロケ動的対称性」を持つことを明らかにし、開放系・孤立系の両方で時間結晶状態が実現することを実証しました。開放系では散逸によって、孤立系では量子多体系の熱平衡化によって時間結晶状態が実現・安定化しています。

この研究は、開始から終了まで約1ヶ月という非常にスピード感のあるものでした。さらに実は、この論文を書いている途中で同じようなことに言及しているarXiv論文を発見してしまい、そこから池田さんと二人がかりで論文を2,3日で仕上げるという荒技をやった論文です。実働期間は短いですが、僕らが今まで考えてきたことが色々と詰まっている論文で、非常に面白いものに仕上がったと思っています。是非ご覧ください。

Koki Chinzei and Tatsuhiko N. Ikeda,
Time Crystals Protected by Floquet Dynamical Symmetry in Hubbard Models
https://arxiv.org/abs/2003.13315


PS
常次研ブログを見ていると僕と池田さんしかブログ投稿していませんが、他のみんなも元気に研究してます(笑)。常次研紹介ということで、去年度に出た僕と池田さん以外の論文を紹介します。

野澤くんの論文
・一次元ハバード模型における一般化流体力学の研究
https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.101.035121
・一次元XYZ模型における局所保存量に関する研究
https://arxiv.org/abs/2003.02856

深井くんの論文
・量子可積分系での一般化ギブス分布に関する研究
https://arxiv.org/abs/2003.00022


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